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事業報告

平成16年度事業報告

 第39期(自平成16年4月1日~至平成17年3月31日)の決算にあたり、当社団の事業概況についてご報告申し上げます。
 平成16年度は、自然災害が発生する大変厳しい年であった。台風は過去最多の10個が上陸し、死者・行方不明者が200人を超え、新潟県中越地震では多くの死傷者、多数の住宅被害が出た。

 景気の先行きに明るさは見えたものの、わが国を取り巻く環境は依然厳しい状況にある。金融機関の不良債権処理が進み、金融システムに安定感が出始め、民需中心による景気回復も見られるが、相変わらず中央と地方の地域間格差が拡がっている。

 市場主義・競争主義が中心となりつつある今日、企業の統廃合が後をたたず、不採算地域に対しては撤退してしまうという企業の論理が先行し、ますます都市と地方の格差が拡がっているのが現状である。

 政府は、市町村合併が進む中、電子政府・電子自治体の推進によりIT化に対応した業務改革の推進、行政情報の電子的提供等により国民の利便性、サービスの向上を心がけるものである。

 このような状況の中、日本郵政公社が発足して3年目を迎えた。郵政公社はこの一年、アクションプラン・フェーズ1の達成に努め、全職員が懸命な努力を続けゆうパックを全面リニューアルし、ローソン全店での取り扱いもスタートした。JPSによる生産性向上も着実に成果を上げ、引き続きアクションプラン・フェーズ2を公表し最先端のサービスの創造をめざすべく取り組んでいるところである。

 小泉内閣は、平成16年9月10日郵政民営化の基本方針を与党の了解なしで閣議決定を行なった。
自民党では、内閣改造、党役員交代等により「郵政事業改革に関する特命委員会」が解散し、新執行部により『郵政事業に関する関係合同部会(総務・国土交通・財務金融)』が発足し、党内論議を重ねているところである。しかしながら「なぜ今民営化なのか」「なぜ公社ではだめなのか」という疑問に対して、さらには四分社化に対してその採算性への問題点について政府からの明確な回答が得られていないのが現状である。

 そのような状況の中、当会発行の機関誌 逓信「耀」をより一層充実させるため毎月編集会議を開催した。編集方針も総務省の施策を中心に、日本社会の近代化に大きく貢献した近代の英傑『前島 密』、郵政民営化論議について関係する国会議員の先生方に取材を通してメッセージを掲載した。
 また、日本郵政公社幹部によるインタビュー、「日本郵政公社に期待する」シリーズでは、郵政行政審議会委員等の先生方より意見を伺い、新しいシリーズとしては、「地域デビューはどのように行なうか」「郵政民営化に対する正しい認識とその基本的視点」「郵政民営化とビッグピクチャー」「郵政民営化と小泉構造改革の本質」「郵政民営化の虚構」等さまざまな意見を掲載することができた。

郵政民営化論議について
10月号  参議院議員 長谷川憲正先生
12月号  衆議院議員 村井 仁先生
 3月号  衆議院議員 村井 仁先生
      郵政民営化論議 視点・論点(Ⅰ)
 3月号  参議院議員 荒井広幸先生
      国民と国益の安全保障からの郵政改革(Ⅰ)
インタビュールーム
11月号  日本郵政公社 本保芳明 常務執行役員
日本郵政公社に期待する
 5月号  一橋大学大学院商学研究科教授 杉山武彦先生
 6月号  消費生活アドバイザー&ファイナンシャルプランナー 松崎陽子先生
 7月号  慶応義塾大学経済学部教授 吉野直行先生
 9月号  神戸大学大学院経済学研究科教授 滝川好夫先生
地域デビューはどのように行うか
6・7・8月号  ライフプラン学習支援研究所代表 鈴木啓三先生
郵政民営化に対する正しい認識とその基本的視点
11・12月号  作新学院大学教授 石井晴夫先生
郵政民営化とビッグピクチャー
2・3月号  北海道大学大学院文学研究科教授 金子勇先生
小泉構造改革と郵政民営化
1・2・3月号  株式会社UFJ総合研究所 森永卓郎先生
郵政民営化の虚構
10・11・12月号  フリージャーナリスト 石原洸一郎先生

 地域に貢献する郵便局ネットワークの活用として全国でさまざまに活躍されている郵便局を取材を通して紹介した。
(1)大阪府旭新森郵便局(2)神奈川県中川駅前郵便局(3)東京都青梅住江町郵便局(4)新潟県水津郵便局(5)高知県野根郵便局(6)熊本県教良木郵便局(7)福岡県戸畑鞘ヶ谷郵便局(8)山口県八代郵便局(9)岐阜県石徹白郵便局(10)北海道京極郵便局(11)三重県沼木郵便局等全国各地で郵政事業に携わる関係者から取材を通して幅広く郵政三事業をPRすることができた。

  郵政事業研究室は、特集シリーズとして

・「郵政民営化と郵便貯金の在り方について」
   ~幅広く国民の視点に立った郵政改革議論を~  5月号
・「経済同友会が提言する郵政改革の問題点の検証」  6月号
・経済財政諮問会議 中間報告(論点整理)を受けて  8月号
・「郵政事業改革に関する特命委員会」
  における民間金融機関の主張とそれに対する反論   9月号
・ 「郵政民営化の虚構を糺す」            2月号
・ 「第161国会における郵政論議」         3月号
 
等さまざまな議論を紹介し検証することができた。

 郵政事業フォーラム21については、平成11年に発足した。今期も会員および郵政関係者よりセミナー開催の要望が強く、下記の通り3回開催することができた。

第21回 平成16年 7月16日(金)
場 所 霞ヶ関東海大学校友会館
テーマ 『国民生活の視点から見た郵政改革』
講 師 紺谷 典子先生((財)日本証券経済研究所主任研究員)
第22回 平成16年12月 7日(火)
場 所 霞ヶ関東海大学校友会館
テーマ 『国民と国益の安全保障から』
講 師 荒井 広幸先生(参議院議員)
第23回 平成17年 3月10日(木)
場 所 霞ヶ関東海大学校友会館
テーマ 『郵政民営化論議の行方』
講 師 福島 徳先生(産經新聞東京本社編集局経済部記者)

 今期は、未来の郵便局の在り方に関する調査研究を行い、総務省、日本郵政公社、会員各位に調査資料を報告した。この調査研究は、「未来の郵便局」の空間やサービスについて接客、サービス、デジタル技術、コミュニティ、経済など多様な観点から検討することが趣旨である。
 そのために本プロジェクトは2つのユニットで構成した。「こどもたちのワークショップ」と有識者による「未来の郵便局を考える会」である。こどもたちが想像・創造したイメージを踏まえ大人の有識者がその実現可能性や今後の対応課題などについて分析・討論するというユニークな手法を用いた。

◆こどもたちのワークショップ
 こどもたちが参加するワークショップを行い、未来の郵便局のイメージを想像して、実際に絵や造形などの様式で創造してもらうことにした。未来を生きるユーザーとして、郵便局に感じるもの、求めるものを論じ、実際に形として表わす。これをワークショップ形式で行うことにより、こどもたちがともに考え、ともに創る学習としても機能させることとした。

◆未来の郵便局を考える会
 各分野の有識者からなるワーキング・グループには、・こどもたちのアイデアを実現する方法や課題 ・郵便局に対するこどものイメージと現実とのギャップに照らしての郵便局の課題 ・有識者としての未来像等を検討してもらうこととした。ウェブサイトで情報を共有しながら電子メールで議論をするとともに、会議を開催してこどもたちのアイデアや作品を実際に見ながら意見交換を行った。

「未来の郵便局を考える会」のメンバー
飯野 賢治 ゲームクリエーター
(株)フロムイエロートゥオレンジ代表取締役
松浦 季里 CGアーティスト
関根 千佳 (株)ユーデット代表取締役
林  敏彦 放送大学大学院文化科学研究科
政策経営プログラム教授
兼安 時紀 (株)セガ 新規事業部 副事業部長
瀬名 秀明 作家
國領 二郎 慶應義塾大学環境情報学部教授
竹中 ナミ 社会福祉法人プロップ・ステーション理事長

 最後に、郵政事業に関する特命委員会(第1回~第25回)〔上・下巻〕資料をまとめた資料集を作成し会員各位・関係機関に配布し好評を博した。 以上、総務省の補完的役割をすべく多方面に活動して参りました。