通信研究会

通信研究会のご案内

事業報告

平成27年度事業報告

 第50期(自 平成27年4月1日~至 平成28年3月31日)の決算にあたり、当社団の事業概況についてご報告申し上げます。

 第二次安倍政権で放った三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)はデフレ脱却、経済再生と財政健全化を進め、日銀を巻き込んだ異次元の金融緩和政策等により、株高、円安傾向となって表面化し、輸出産業などは一部企業業績、雇用面で改善が見られ、また、株式など保有している投資家等の金融資産は上昇し利益に浴したが、実態的には可処分所得が増えないなど国民生活は特段に改善されていない。さらに平成26年4月から消費税が8%に増税されたことによって民間消費の大幅な落ち込みがみられ、その下支えとして期待された経済対策も公共投資が微増に終わったことにより十分な経済効果をもたらされていない。
 日本郵政グループの上場に向けた動向は、平成27年8月1日上場予定3社が株式分割を行い、9月10日東京証券取引所は、11月4日の上場を承認。そして11月4日に日本郵政グループの日本郵政株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険は日本で初めて親子同時上場を果たした。約8割を国内マーケットで、約2割を海外マーケットに向けて売られ、国内分の内95%は個人投資家に売却、3社合わせて約180万人の個人投資家が誕生したといわれている。売却割合は3社とも11%で、売却規模は、日本郵政が6,930億円、ゆうちょ銀行は5,980億円、かんぽ生命保険は1,452億円。日本郵政が保有する金融2社の初回の株式売却益は、日本郵政グループの企業価値及び株式価値の維持・向上のために活用されることになり、新規上場時の売却収入は、政府からの日本郵政株式(自己株式)取得資金に充てることとなっている。
 12月3日、日本郵政は12月2日の終値1,907円で3億8千万株、比率にして8,5%、金額7,309億円を自己株式取得のために使った。自己株式買いでは過去最高の金額である。結果約1兆4,000億円を政府に復興債の償還財源として納めることができた。
 今後、株主利益の最大化を求めてくる株主と、郵政民営化法等改正法によって公益性、地域性が求められている郵政事業について、二律背反的な命題をどう克服することができるのか大きな課題である。
 第149回郵政民営化委員会は、政府から求められている「郵政民営化法施行令の一部を改正する政令案」について妥当であると報告を行った。これは、従来のゆうちょ銀行における限度額が1,000万円では、年金、退職金、相続対策などにおいて極めて不便であり、利用者利便の向上に資する観点から引き上げを決めたものである。これによって平成28年4月1日からゆうちょ銀行の限度額が1,000万円から1,300万円に、かんぽ生命は基本契約はそのままで、通計制度の枠内で加入4年経過した契約について、基本契約の限度額の計算に算入しない金額の限度を,現行の300万円から基本契約の保険金額の限度額と同額の1,000万円に引き上げられた。
 総務省情報通信審議会から平成27年8月26日、ユニバーサルサービスコストの負担額について初めて答申が出された。考え方は、採算地域から不採算地域への補填によって、ユニバーサルサービスの提供が維持されているとし、郵便部門は2割の黒字で8割の赤字を賄っているとして1,873億円、銀行窓口業務は575億円、保険窓口業務は183億円、合計2,671億円をユニバーサルサービスコスト負担として試算した。将来的にはユニバーサルサービスのコスト負担の問題は、国民全体として捉えていく必要があるのではないか。ユニバーサルサービスが課され、日本全国にきめ細かなネットワークを持って、公共サービスを行っているのは郵便局だけである。郵便局を通信、物流、金融の拠点、さらに社会資本として行政と生活の代行機能を併せ持つことができれば日本郵政グループの企業価値も向上するであろう。
 今後、日本郵政グループの企業価値をいかに高めていくことができるのか、上場審査基準の適格要件にある「企業の継続性及び収益性、企業経営の健全性、企業コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性等」に対して上場会社としての適性が求められてくる。
 会員のニーズに応えるべく、可能な限りの情報を提供していくために機関誌『逓信 耀』の誌面をより一層充実させるため、毎月企画編集会議を開催し、焦点を明確にして全国各地に取材を行った。 編集方針については、国内外の政治・経済問題の専門家を中心に執筆いただき、さらに、日本郵政グループ各社の経営戦略を紹介し、郵政民営化法等改正法によって郵便局ネットワークの維持・活用、公益性及び地域性が求められる郵政事業について、国会議員、有識者の先生方等によりさまざまな角度での検証を行い、その問題点と課題を浮き彫りにした。また、「地方自治と郵政事業」というテーマで8人の市町村長から郵政事業と地方自治体との関係、郵便局が地域社会に果たしてきた役割、連携等について意見を伺った。全国の郵便局長にご協力いただき、インタビューや各種座談会等を通じて、分社化による影響、地域社会に貢献する郵便局の実像や今後の展望等について掲載することができた。
 公益目的事業として行った「日本郵政グループの理論株価と実際株価の差異分析」(京都大学経済学部藤井秀樹ゼミナール 日本郵政企業分析チーム)、「欧州郵便会社の業態変化と公的サービス維持の手法」(関西学院大学経済学部野村宗訓教授)報告会を開催した。いずれも時宜を得た大変有意義な報告会で、資料を関係機関に配布した。全国各地に講師派遣等を行い会員のニーズに応えることができた。


《理事会開催》
 ○第1回 平成27年5月18日(月)ホテル・ルポール麹町
  ・平成26年度事業報告及び決算報告等について
 ○第2回 平成27年8月25日(火)ホテル・ルポール麹町
  ・第1・四半期事業報告及び決算報告等について
 ○第3回 平成27年11月17日(火)ホテル・ルポール麹町
  ・第2・四半期事業報告及び決算報告等、公益目的支出計画変更について
 ○第4回 平成28年3月16日(水)ホテル・ルポール麹町
  ・第3・四半期事業報告及び決算報告等について
   平成28年度事業計画及び収支予算案

《総会開催》
 ○平成27年5月18日(月)ホテル・ルポール麹町
  ・平成26年度事業報告及び決算報告、公益目的支出計画について
 ○平成28年3月16日(水)ホテル・ルポール麹町
  ・平成28年度事業計画及び収支予算案について

《報告会開催》 ホテル・ルポール麹町
・日本郵政グループの理論株価と実際株価の差異分析
   郵政事業企業分析チーム
   京都大学大学院経済学研究科教授 藤井秀樹先生他 
・欧州郵便会社の業態変化と公的サービス維持の手法
   関西学院大学経済学部教授 野村宗訓先生

《調査・研究会》
・日本郵政グループの理論株価と実際株価の差異分析
    郵政事業企業分析チーム
    京都大学大学院経済学研究科教授 藤井秀樹先生
・欧州郵便会社の業態変化と公的サービス維持の手法
    関西学院大学経済学部教授 野村宗訓先生

《資料集作成》
*日本郵政グループの理論株価と実際株価の差異分析
*欧州郵便会社の業態変化と公的サービス維持の手法

≪寄付・寄贈≫  公益財団法人 通信文化協会

*事業報告の内容を補足する重要な事項はないので、附属明細書は作成しない。