通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2018年8月号  前山総一郎・福山市立大学大学院都市経営学研究科教授

地域コミュニティを活かす「地域力」着目
郵便局は地域を守る重要なインフラ


 人口減少社会では「地域力」を高める必要があります。人口が数万人、一万人ぐらいのところでも、そういう力を持っているところはあるのです。地域社会の中には意外なポテンシャルがあるのではないかと思うのです。増田レポートの人口ビジョンはある意味、鮮烈に見えたものの、こうした内発的な発展力とか、リタイヤ組のなかから、まちづくり協議会などで事業展開できる人が増えてきたりする現実、それが見えていないのかなと思います。増田レポートは、多くの自治体の経営・運営にあって、それまでの政策と事業と数値が一致してなかったところに、具体的指標にもとづいての政策実施を行ううえでのカンフル剤を投与してくれたという点では大きな意味があったといえます。ただ、実際の地域を支える、地域を元気にするという面では、こういう、「地域力」を構成する、「地域資源力」「(住民)自治力」、「発展力」を具体的に支援していく必要があるのではないでしょうか。
 アメリカとの比較で見ますと、日本の郵便局は非常に固有な性格と気配を持った組織です。それこそ地方都市でも中山間地でも、やや限界と言われている地域もそうですが、コミュニティのインフラという面が結構あると思います。年配の方々が郵便局に行って、非常に安心しながら様々な相談を受けています。アメリカのポストオフィスや民間銀行はそういうサービスをしません。そういう人と人との密接なつながりというものは、日本固有のものだと思います。それも日本的な形成過程にルーツがあって、特定郵便局がもともと地域の有力な方々、地主層とかに担ってもらったことから、長年に亘り地域に非常に密着して郵便局経営をやっていた。それが受け継がれていることに大きな意味があると思うのです。