通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2019年5月号  横江公美 東洋大学国際学部教授

人口減少で需要がビジネスにならない時代
地方の郵便局は存在するだけで“有難い”


 各自治体が作成している総合戦略は、今の規模を守ろうとしているのが前提にあると思うのです。私はその前提が崩れる時が来るのではないかと思っているのです。つまり、人がいなければ、生まれ故郷に帰ったとしてもビジネスが成り立たないわけです。以前、ふるさと創生でお金を配ったことがありましたが、結局、全部“箱物”に消えてしまい、一番良かったのは「金の延べ棒」だったという話があったと思います。高度経済成長期はそれで良かったのかもしれませんが、それでは通用しない時代が既に来ていたわけです。そして今、あまり期待できないのではないかと懸念しています。現場から見ると、人口減少時代の前提が甘いのではないかという懸念を持っています。なぜ、そのことを強く言うかといえば、ここからの負の影響を被るのは若い人たちだと思うからです。「これが仕事です」と若い人たちが言われてやっていたことが、将来的にまったく無用のものになり兼ねない。だから、若い人たちを犠牲にしないという観点がものすごく重要になってくると思っています。

(郵便局の果たす役割について)
 郵便局はこれから“存在するだけで有難う”と言われる時代になると思うのです。都会では宅配業者や金融機関などと競争はあるかも知れませんが、千穂に行くと過疎化が進んでいますので、事業は撤退していきます。郵便局だけはビジネスを超えたところで存在し続けるわけですから“存在してくれて有難う”というのが長い目で見ると郵便局の役割になっていくだろうと思います。存在していれば、コンパクトシティではありませんが、郵便局を中心にして、まちづくりができ、そこで何かが出来ます。自然とコミュニティの中心になっていくと思うのです。