通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2019年6月号  図司直也 法政大学現代福祉学部教授

「地域遺伝子」を磨き直す作業が地域再生
郵便局は地域づくりの“担い手”に


 様々な地域資源の価値は時代が変わることによって、あるいは、世代が変わることによって、次第に見えなくなったり、分からなくなってきたりしていると思うのです。だから、かかわりをもう一度取り戻すといった作業が必要になります。世代を超えて価値を共有したり、次の世代が新たな価値を上乗せしていく作業を交えながら、地域を持続していくのだろうと思います。(恩師で早稲田大学名誉教授の)宮口先生も、地域の資源をどのように世代をつないでバトンリレーするのか、ということをかなり意識していて、外の力を借りて新しい価値を上乗せするのが地域づくりといった表現をされていて、私の地域づくりインターンの経験もそこなのです。
 地域には代々伝わってきた技とか知恵とかの資源があり、それを「地域遺伝子」と早稲田大学の後藤春彦先生は呼んでいます。本来、遺伝子はつながっていくはずなのですが、地域遺伝子は見えなくなっていたり、隠れてしまっていたり、ぼやけたりするので、もう一度、それらを磨き直してあげることによって、今の世代に合うように仕立て上げる場を作っていくことが、地域再生として大事なことだと思っているのです。

 昔は皆で集まって、寄合とか会合などをやっていれば、大体、その中で話をするので“担い手”の顔が見えてきたものです。今の時代、そういう風に住民の顔を知っているのは誰かというと、配達を仕事にされている郵便局の皆さんだと思うのです。むろん、個人情報が厳しくなっていますから難しい点はあると思うのですが、“見守り”を含めて、郵便局の皆さんは地域を支える役割を担っている。役所でもわかることは多いのでしょうが、現場をより知っているのは郵便局の方だと思うのです。そういう皆さんの“現場感”をもっと地域づくりのなかに取り込んでいくことも必要でしょう。