通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2021年1月号 岡本義行 法政大学地域研究センター特任教授

地域再生へ産業集積を実現し競争力確保
郵便局は地域活性化へ積極的な取り組みを


 (第二期地方創生で「関係人口」の創出・拡大に重きが置かれていることについて)、もちろん「関係人口」の創出・拡大は良いと思いますが、その人たちとどうやって関係を構築していくのかという見通しが必要です。ある自治体の人が「同窓会や仕事の取引で来られる方を上手く取り込みたい」という話をされていましたが、その地域の人たちにとってどういうメリットがあるのか、長期的に何が提供できるのかを考えてほしいと思うのです。人を惹きつける地域の魅力が重要です。

 私の専門は産業集積論といって地域の産業をどうやって集積するかということです。例えば、シリコンバレーのように、日本でも有数の金属加工のまち、新潟県の燕三条や陶磁器のまち愛知県瀬戸市など、伝統的な産業がどうしたら競争力を持てるか、ずっと関心を持っていましたので、イタリアの産業集積の研究を始めたのです。地域産業が強くないと雇用は生まれないし、所得も低いままですから、産業集積をどうやって実現するか、非常に重要になってきます。

 オランダの農業も何度も視察に行きましたが、先端的な農業に取り組んでおり、世界の農業の中心になっています。典型的なのはトマトです。生産者のハウスが集積しており、ワーヘニンゲン大学が中心を担っています。その生産性は世界最高です。

 日本ではよく「地方に帰って農業をやろう」ということが言われますが。そういうものではありません。農業の専門家として農業生産で世界的な競争力を持つ。製造業でも諸外国と競争できるような条件や人材を絶えず持ち、そのためのイノベーションをやっていくことが必要です。