通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2021年2月号 熊倉浩靖 高崎商科大学特任教授

地域を知る人が地域活性化の促進役に
「知識人にがり論」、郵便局は共助・共営の核に


 菅政権になって「自助・共助・公助」が取り上げられていますが、私たち自身が「公助」があるからそれにたどり着くまで「共助」で頑張ろうと思っていると、大きな間違いだと思います。大災害が発生した時に、国の防災機関はすぐには出てこられないだろうし、市町村の職員もなかなか現場に来られないでしょう。地域の人たちが助け合い、一番厳しい時には手を差し伸べる「共助」が一番のポイントで、共助があることを前提として、自分の命を守る「自助」、そして「公助」はいわば一番後ろの球拾い。最後は制度なり、少し遅ればせながら足りないお金を用意するということでよいと思うのです。共助を中心とした、そしてSDGsを人類の立場として、本来の暮らしの中でどう展開するかが地方創生政策のポイントだと思っています。そうなると、「共助」と言うよりは「共営(共に営む)」という言葉がよりふさわしいかもしれませんが、共営ないし共助の空間としてそれぞれの地域で人々が自分の役割を持ち寄りながら、世界のSDGsを牽引できる日本社会になっていくことが望ましいと思います。

 僭越ながら多少は専門性を持って横串を指せる人間として、群馬県内外の幾つかの市町村のまちづくりに関わっています。そこで感じたことですが、地域の皆さんが旧町村単位の地域づくりの大切さと現実性を実感し、動き出すために、地域をある程度知る人、地域から信頼感のある第三者が座回し役、ファシリテーターとして入ることは意味があります。40年も前になりますが、「地識人にがり論」を提唱したことがあります。地域全体が豆腐のように柔軟性があるのはよいのだけれど、地域をまとめるには地域を良く知っている第三者が“にがり”の役割を果たすことが必要だという実感は高まっています。