通信研究会

機関誌 逓信「耀」 特集 地方創生のいま、地域を元気に!

2022年1月号 林 靖人 信州大学学術研究・産学官連携推進機構教授

ミカタを変える価値を生み出すブランドづくり
未来への挑戦、郵便局と大学の「連繋」を期待


 普段の研究テーマでは、「ブランド」を扱っていますが、これが地域ブランドに発展したことも地方創生に関わりを持つきっかけになりました。例えば、ペットボトルにラベルが貼られていますが、それを外して飲んでみてください。商品名や企業名を当てるのは意外に難しいことに気がつきます。ここで重要なのは、私達がラベルから喚起(想起)される情報に左右されて判断や行動をしていることです。ブランドも人を動かす情報の分かりやすい事例なのです。
 こうした効果は、地域の特産品(地域ブランド)でも見ることができます。京都と名がつく、北海道産、信州産と名がつくとイメージが変わるのではないでしょうか。このことが地域にとって大きな価値を生み出すシカケになると感じて、地方創生に感性情報学を使えると感じました。しかし、研究室で検証するシカケはあくまでも仮説や実験に基づくレベルのものです。現実社会を本当に説明できるのかには疑問があります。したがって、それを実社会の中に持ち込み、外部組織や実践の中で動くような「シクミ」にし、社会制度などの「システム」まで持っていければ地方や地域社会を動かすものになる。学問が社会を変えられるのかという挑戦として、地方創生は、ブランドに続く面白いテーマだと思っています。

 郵便局はもともと国をベースにしていることもあって、イメージから言いますと、圧倒的に安心感があります。そして全国津々浦々、どこにでもあります。国営であったことと、どこにでもあるということが非常に安定性を持ったイメージを生み出しています。そこは強みのゾーンでしょう。しかも郵便・物流だけではなく、金融、保険とあらゆる分野を担っています。とはいえ、幾つかの事業分野は社会環境の変化によって大きく打撃を受けていることは承知しています。様々な変化に対して、郵政事業、郵便局、あるいは企業として、どういうふうに適応していくのか。以前から指摘されていたことかもしれませんが、しっかりと考えなくてはいけないタイミングにあるのではないかと強く感じます。郵便局ネットワークをはじめ郵政の社会インフラは圧倒的な強みを持っています。その強みを最大限活用することを考えつつ、人間の行動様式や情報の媒体や伝え方、情報の価値が変わってきている中で、ビジネスモデルをどう変革するのか、新たな郵政事業の展開に向けて、非常に興味深く見ています。