通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2012年12月号 前総務大臣 (前)衆議院議員 川端達夫先生に聞く

改正民営化法を活かし、経営努力、地域貢献を
郵政事業は存在そのものが社会貢献


 ――郵便局ネットワークの維持とユニバーサルサービスコストについて先生はどのようにお考えですか。

川端先生 ユニバーサルサービスを郵便以外に課すということは非効率であるし、資本投下に対して利益は見込めない。大体、赤字が見込まれるものはやらないというのが民間企業の大原則、当たり前の経営理論である。

 そういう論理で、民間金融機関は中山間地や過疎地から撤退してしまったが、郵便局まで撤退したらいわゆる金融サービスの拠点はなくなってしまう。インターネットがあるじゃないかと言うかもしれない。確かにインターネットで何でもできるようになったこと自体は大きな進歩だが、高齢者にとっては縁遠い話だ。国民に対してあまねく公平なサービスの観点から、郵便だけでなく、貯金、保険にもユニバーサルサービス義務を課すことになった。そうしないと金融過疎地をつくってしまう。

 ユニバーサルサービスが課されたことは、経営面から見れば重い荷物だ。なぜ課されたかというと、これができるのは公共性と地域性を持っている日本郵政グループの皆さんしかいないからである。その心意気を持ってやってくださいとの期待でもある。


 ――国民のためのより良い郵政事業はどのようなものでしょうか。

川端先生 やはり民間会社だから適切な利益を出さないといけない。慈善事業ではない。利益を出すためには利益を出せる会社にすることだ。ただし、利益を出すためにサービスが悪くなってはいけない。そこはしっかりと守ってもらう。

 今、企業の社会的責任ということがよく言われる。ある意味で「我が社は、これだけ社会に貢献している良い会社ですよ」とPRすることによりイメージアップを図り、インセンティブも働く。ところが、郵政事業はそのようなことをするまでもなく、存在そのものが社会的貢献の役割を担っている会社なのだ。義務づけされているというより、やって当たり前。それをやることが仕事であるということだ。