通信研究会

機関誌 逓信「耀」 インタビュー

2013年10月号 特別対談 参議院議員 西田昌司先生、評論家 中野剛志先生

新自由主義 グローバリズムへの警鐘(上)
TPP、世界の動向、アメリカの変貌、安全保障


中野先生 TPP(環太平洋経済連携協定)それ自体を論じよといわれても、秘密交渉になっているので、発言のしようがないのですが、それでもなぜ懐疑的もしくは反対かというと、TPPを推進している人たちの考え方、ロジックが根本的に間違っているからです。その考え方が、グローバル化しようというグローバリズムであり、市場に任せて弱肉強食でやればいいという新自由主義だからです。大体、TPP交渉を秘密で進めること自体変です。何で秘密にしなければならないのか分かりません。

 ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのジョセフ・スティグリッツはTPPに反対です。なぜTPPに反対しているかというと、TPPは両国に恩恵をもたらす自由貿易とは違うと言うのです。スティグリッツはTPPによって誰が儲けるかというと、アメリカの一部の大企業、一部の利益集団だけだという。彼らが利益を得るために、自分たちが有利になるアメリカの制度を他国に押しつけようとしている。それをTPPやFTA(自由貿易協定)でやっているという。スティグリッツはさらにいう。TPPやFTAによってアメリカ国民も海外の国民も得はしていない。考えてみれば、アメリカの制度によって、アメリカは一部が儲けるだけで格差が拡大し、国民は不幸になっている。そんな制度を世界に広げるのはよろしくないと言っているのです。

西田先生 私がTPP加入に反対する理由は中野先生と同じです。要するに自由主義、自由貿易ではなく、企業資本主義だからです。本来経済とは、「経世済民」世の中を治めて民を救うこと。さらにいえば、富の再分配を通じて皆が豊かに平等に暮らせるというところに経済の意味がある。ところがアメリカでは、一握りの大資本、経営者を含めた大企業が、自分たちが投資できる環境を整えてもらえば効率のよいところにどんどん投資できる。そういうシステムづくり、環境づくりを進めようとしている。だから企業経営者がTPP、FTAに賛成だという理屈は分かる。ところが、我々政治家はなぜ懐疑的になっているかというと、企業が大きくなって国民に還元するかどうかということです。雇用が広がり、賃金が増えて税金を払ってもらうことにより、再分配され新たな投資や消費に結びつき、行政経費を賄うことができるのですが、TPPでそれができるとはとても考えられない。