通信研究会

機関誌 逓信「耀」 シリーズ 「政策を問う」

2011年5月号 第23回 衆議院議員 荒井 聰先生に聞く!

地域と共に成長する郵政 公益性の復活に期待


 ユニバーサルサービスを守りながら民営化をしていくというのは元々無理がある。全国一律料金でサービスを提供することは、民間のビジネスモデルとしては成り立たない。そのことを最初に理解したのが前島密だ。万国の郵便の共通理念であるユニバーサルサービスを守るためにどうするか。前島密は、郵便事業と密接な関係にあるビジネスとを一体化し、相互メリットを出してユニバーサルサービスを守れるようなビジネスモデルを一生懸命考えた。そして、郵便事業に地域の小口の金融事業を結びつけることによってユニバーサルサービスが守れると判断した。その概念はまさしく正しいし、それ以上のものは未だつくられていないと民営化論議の当時から思っていた。

 自民党政権の時代に日本社会を大きく変えた三つの政策的な誤りがあると思っている。一つは郵政だ。地域社会の安定の核になっているのが郵便局、小学校、交番などだが、その一つが明らかに壊れ出してしまった。二つめは、わが国は中間層が厚い中流社会が特色であり、社会が安定する大きな要因であったが、労働者派遣法が改正されたことにより規制改革で格差社会が生じてしまった。三つめは、後期高齢者医療制度。日本の社会はお年寄りを大事にすることが社会の一つの安定の根幹にあったと思う。そこをバッサリ切ってしまった。まさに地域社会を切り捨て、労働環境を悪化させて、お年寄りのプライドを捨てるようなことをやった。単に制度に問題があるというより、日本社会全体を大きく変えてしまった。